カナダ永住権取得への道

カナダの永住権取得を目指している30代男性のブログです。

会社に辞意を伝えた|暖かくて居心地の良い場所【第3話】

「どうだ、最近の調子は?」

 

聞きなれた声で今の職場に送り出してくれた前の上司が言った。私は用意しておいた言葉を返した。

 

「はい、もう今は気分も吹っ切れて前向きな気持ちになっています。というのも、実は、希望を帰国ではなく退社にしたいと考えています」

 

実は、私は現在の駐在先からもともと日本への帰国への希望を出していた。仕事がうまくいかず、遅くまで残業で残るような日々が続いていた中でのことだった。前回の話し合いではもう少しこちらで頑張れないかということで話が平行線に終わり、今回はその続きだったのだ。

 

あちらからすれば、このままアメリカで頑張るか、それとも帰国して日本でまた元の業務に就くのかという話をすると思っていたのに私から突然退社の希望を告げられたのでさぞかし驚いたことだろう。

 

オンライン会議システムでお互い画面は切って音声のみをつないでいる。こちらの言葉を聞いた後、沈黙が続いた。突然のことに言葉を失ったというのがそのまま当てはまる場面だ。

 

私は続けた。

 

「といいますのも、あれから色々と考えました。今の私の歳、今後どう働きたいか、そして老後をどう過ごしたいのか。子どもの教育。子どもが大人になってからの人生。そう考えると、日本に帰って日本でずっと働き続け、定年退職後もずっと日本で暮らし続けると言うのが私の一番したい生き方ではないと言う結論になりました。

 

妻にその話をしたところ、妻が以前から胸に思い抱いていたカナダへの移住ということを行ってきました。色々調べてみると私が行きたいような生き方ができるんじゃないかと、思っています。

 

今の仕事が嫌だとか、職場がどうと言うことではなく、今後の私と家族の人生のために、カナダへの移住を目指して退職したいのです。」

 

長々と一方的に、そして早口になってしまった。元上司は黙って最後まで聞いてくれた。

 

元上司は元上司はショックだと言った。さらに、日本に帰国した後も居場所はある、と続けた。本当にありがたいことである。ここに赴任してくる前も大切にしてもらったし、帰国しても私の居場所がある。頼りにしてくれる人がいる。私にとって日本の職場は暖かくて第2の我が家のような居心地の良い場所なのだ。

 

胸が締め付けられる思いだ。だが心は揺るがない。私は感謝の気持ちを伝え、退職の意思に変わりが無いことを伝えた。

(2022/9/14)

 

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